壊れた石

先日、思いがけずノーキョーの野菜直売場で、親戚の人に出会った。何を買いにいらしたと聞いてみると、 にんにくとか。黒にんにくを作るので、買占めに来たと大層な事をおっしゃる。

サプリメントで売っているのは知ってるけど、高価なので自作するとか。一日一粒で元気もりもりと、広告のような事を言う。

健康ブームで、はちみつとか、熊の肝とか、まむしの黒焼きとか、都会に無いものが あるぞ。民間信仰なんですかね。せいぜい大枚はたいて健康になってください。

そう言えば、昔から真珠を粉にして飲むといいってのがあったな。かのクレオパトラも 愛飲したとか。志摩サミットのおみやげは、真珠の粉だったのかしらん。

EUの母ことドイツのあのおばちゃんは小躍りして喜びそう。そして、オバマちゃんは、 今度のサミットは真珠で有名な伊勢志摩。一緒に行ったら、真珠を沢山買ってあげるから 一緒に行こうと女房に言ったらしいけど、肘鉄砲をくらったとか。

何よ、あんなイエローモンキーな 醤油臭い所へ行くものですか。これは表のいい訳、裏では、うちの旦那、近々失業 しちゃうのよね。それに備えて、女のネットワークをしっかり作っておかなければ。 そんな訳で、超ー忙しいのよ。

出張のお土産は忘れるなよ。忘れたら家に入れてあげないから。昔のオイラーの家は そうだった。今度、九州出張。九州の何処行くの?大分。だったら、空港で売ってる どんこの椎茸と干し海老買ってきて。すっかり、現地土産通になってる女房でした。

オバマちゃんの所も一緒で、安倍ちゃんに相談したら、相哀れんで、すてきな真珠を 調達してくれたらしい。こういうのは国庫から出金するんでしょうか? 文春あたりが 探ってくれないかな。

そして、健康の次は幸福ブーム。黄色い財布を持つと、お金がどんどん入ってくるらしい。 競馬で、出て行く一方の方は、黄色い財布が良いかも。ついでに、応援は黄色いハンカチーフが 宜しい。何ていっても、しあわせの黄色いハンカチーフですから。

幸運を呼ぶ、水晶の数珠とか印鑑なんてのもあったなあ。昔、山梨へ旅行に行った時は、本場の 水晶いかがですかと、随分勧められたよ。

なんとなくクリスタル

前回、クリスタルフィルターなんてのをやった。で、今回も、なんとなくクリスタルで 幕を開ける事にする。

ltspiceで、クリスタルの回路シンボルというかアイコンは何処にある。探したら、Miscの 中に、Xtalってのが用意されてた。コンデンサの電極の間に、長方形の箱が描いてあるやつ。 これ、昔からそうだっけ?

四角い箱は、水晶片、その両面に電極を挟んだ、まさに構造そのものが、電気回路の シンボルになってる。

そして、例のcontribの中には、qztestってのが用意されてる。

C§Y1 N002 OUT {Cs} Rser={Rs} Lser={Ls} Cpar={Cp}
V1 N001 0 AC 2
R1 N002 N001 50
R2 0 OUT 50
.ac lin 1001 3.95e6 4.05e6
* Crystal model from easily measurable parameters
*serial freq
.params fs=4e6  
*difference between serial and // freq 
.params df=10e3  
.params Rs=50
.params Cp=4e-12
.params Cs=2.0*cp*df/fs
.params Ls=1/(4*pi*pi*fs*fs*Cs)

共振周波数とバンド幅(?)と容量と抵抗を決めると、相当する他のパラメータを 決定してくれるとな。そして、出来栄えの測定結果を提示してくれる。

水晶の等価回路は、例の金沢文庫の発振の章 によれば、LCRの直列回路に、コンデンサが並列接続されたもの。この並列コンデンサってのが、 水晶片を挟む電極と水晶を誘電体とするコンデンサに相当するんだな。直列回路は、 水晶の物理定数を、電気回路に置き換えたものだろう。

直列 並列共振間だけ、インピーダンスがインダクティブになるってのが、上記の実験で よく分かりますな。

水晶発振子の注文は、本場山梨県は甲府に工場を構えるの 株式会社アロー電子 とか、老舗の 三田電波株式会社 へ、どんな風に注文するかは、 水晶振動子の発注にてのチェック項目 を参考に。

水晶発振子は、とても安定な周波数を発振する。その秘密は、Q値によって示される。 Quality factor と呼ばれるもので、理論の詳細は 共振回路 を参照。

このQ値、JA1FGさんの名著『送信機の設計と製作』の所で、タンク回路のQとか言って、 大事に扱われていた覚えがある。あの頃は、よく理解出来なかったけどね。こうして、 紐解いてみると、なるほどと頷けるな。そして、アマチャアイズムは、脈々と受け継がれて います。素晴らしい記事を見つけましたよ。 共振回路のQ - その意味と活用

LCR直列共振周波数 と Q値 計算 ツール こんな便利な計算サイトもあるな。

そして、何か物足りないのがあるなと考えていたら、何となく直列ー並列等価変換 なんてのを習ったことを思い出した。すっかり内容は忘れていたけどね。

トランジスタの故障

水晶の発注の所にドライブレベルって項が有る。一般的には100uW以下らしい。等価直列抵抗での 消費電力って事かな。大電流が流れれば、当然発熱して物理形状が変わって、発振周波数が ドリフトする、悪くすると破損するって事だろうね。

前回やったように、定電流で駆動するなんて無茶やってはいけません。水晶に限らず、 電子部品には、繊細なものが多く、ちょっとした間違いで、破損してしまうものが 多くあります。

筆頭は、トランジスタの逆挿しと思うぞ。トランジスタの逆配置すると、何故壊れるか?

トランジスタの“落とし穴”はブレークダウンにあり にもあるような事例である。

例えば、2SC1815だと、リード配置が、BCEと並んでいる。これを逆配置すると、ECBとなる。 はて、どうなるか、健闘してもらおう。コンデンサの逆配と供に、よくやりそうな失敗である。

また、マルチバイブレータが石を弱らせる遠因になっているってのは、初めて知った。 ltspiceの例に、astable回路が有るので、早速確認。 確かに、ベース電圧が、-4.2Vまで落ちている。これ、電源電圧が5vで駆動した場合。

電源電圧を、15Vに変更すると、ベース電圧は-14Vまで振れるようになった。記事にも あるように、音が小さいから電圧上げれば、大きくなるんじゃねぇって人が居ても おかしくない。それって、石を弱らせているんですよ。

昔、修理でどさ回りをしてた時、とある現場で、壊れて動かなくなっていた装置に、 元気が出るように200Vを加えたおじさんがいた。わざわざ、100Vのコンセントを200V 用に取り替えてね。信じられない世界に住んでいる人がいるもんだと、口をあんぐり しましたよ。

石の故障には、どんなのが有るか?調べてまとめておられる方がいた。 部品の故障モード ショートが多いとな。ショートとかオープンなら、テスターで簡単に調べられる。

凝った人は、カーブトレーサを持ち出して、特性曲線をかかせて睨むというオタクがいる。 そういう人には、ltspiceの例のcurvetrace.ascがお勧め。教科書に出て来るようなグラフを 表示させることが出来る。

ngspiceなら、fedoraの中に有った、examples/adms/hicum0/hic0_out.spが、同様な 事をやってくれている。

HICUM0 Output Test Ic=f(Vc,Ib)

IB 0 B 200n
VC C 0 2.0
VS S 0 0.0
X1 C B 0 S DT hicumL0V1p1_c_slh

.control
dc vc 0.0 3.0 0.05 ib 10u 100u 10u
run
plot abs(i(vc))
plot v(dt)
.endc

.include model-card-hicumL0V1p11.lib

.end

ngspiceは、ネットリストを主に指定する。ただし、.controlから.endc内には 測定指令を書いておく事が出来る。バッチ命令をネットリストに押し込んで いるんだ。これで、ネットリストの読み込みと同時に実行される。

各種発振器

examples/pss内に懐かしい名前を見つけた。

Vackar's Oscillator Circuit
* Vackar is a derivation of Colpitt's oscillator (LC based).
* Oscillation is taken on node 4.
* Predicted frequency is 1.91803e+06Hz.

* Models:
.model qnl npn(level=1 bf=80 rb=100 ccs=2pf tf=0.3ns tr=6ns cje=3pf cjc=2pf va=50)

vcc     1 0     5 pwl 0 10 1e-9 5
lrfc    1 2     100u
cdec    2 0     7n
q1      3 2 0   qnl
rb      3 0     4700
c1      3 4     100p
c2      3 0     600p
c0      4 0     1n
l1      4 1     6.2u

*  tran 30n 12u
*  plot tran v(4)

オイラーがやってたVFOはこのタイプを使ってたよ。特徴は、 Vackar 30Mhz-240Mhz とか Very Low Phase Noise Vackar VFO for HF Transceivers に、端的に説明されいる。

他にも面白いのが有る。以前やったリング発振器

Ring CMOS Oscillator
* Oscillation is taken on node "bout".
* Predicted frequency is 3.8e+09 Hz.
*
* PLOT bout

* Supply
vdd     vdd     gnd     1.2 pwl 0 1.2 1e-9 1.2
rdd     vdd     vdd_ana 70m
rgnd    gnd     gnd_ana 70m

* Inverter
mp1     inv1    inv3    vdd_ana vdd_ana pch     w=10u l=0.18u
mn1     inv1    inv3    gnd_ana gnd_ana nch     w=10u l=0.18u
mp2     inv2    inv1    vdd_ana vdd_ana pch     w=10u l=0.18u
mn2     inv2    inv1    gnd_ana gnd_ana nch     w=10u l=0.18u
mp3     inv3    inv2    vdd_ana vdd_ana pch     w=10u l=0.18u
mn3     inv3    inv2    gnd_ana gnd_ana nch     w=10u l=0.18u

* Buffer out
mp4     bout    inv3    vdd_ana vdd_ana pch     w=10u l=0.18u
mn4     bout    inv3    gnd_ana gnd_ana nch     w=10u l=0.18u

.model nch nmos ( version=4.4 level=54 lmin=0.1u lmax=20u wmin=0.1u wmax=10u  )
.model pch pmos ( version=4.4 level=54 lmin=0.1u lmax=20u wmin=0.1u wmax=10u  )

*  tran 0.005n 5n
*  plot tran v(4)

1.2Vの電源電圧で動く、CMOSインバーター回路3段のリング発振器。380MHzって、結構 速いね。いや、十分に速い。こういう回路がより集まって、CPUの石が出来ているのね。 でも、この素子の物理サイズをみたら、4世代前ぐらいの石の技術じゃんと言って あそこの人達は、大笑いするだろうな。

そして、もう一つ面白いのが、

Van Der Pol Oscillator
* Prediceted frequency is about 4.54167e+06 Hz.

* Third harmonic is high as the first one
Ba      gib 0   I=-1e-2*v(gib,0)+1e-2*v(gib,0)^3
* Q is about 10
La      gib 0   1.2e-6
Ra      gib 0   158.113
Ca      gib 0   1e-9 ic=0.5

*  tran 1e-9 15e-6 uic

これ、にわかに理解出来なかった。半導体素子ったら、怪しいBaってのしか無いよな。 調べてみると、負性抵抗らしい。抵抗は電力を消費(して熱を出す)するんだけど、 この負性抵抗は、電力を生み出すらしい。天地がひっくり返る、錬金術ですよ。

この電力を、東京電力へ売れば、余生は左うちわだな。世に、太陽電池でクリーンエネルギー なんてすました顔して金儲けに勤しむ人がいる。(最近はブームも下火かな) 誰か、オイラーに投資すてくれ。太陽電池より、大儲けできるぞ。

こういうの、太陽電池詐欺ならぬ、負性詐欺って言うんでしょうか? 詐欺は不性に 決まっているだろうに!

壊れた石

をシュミレートしてみるか。カーブトレーサーも有る事だし。これが正しいシュミレータの 使い方です。

車屋も、実車で衝突実験って金がかかるから、コンピュータの中で衝突実験してる。 スズキの修ちゃんの所でも、テストコースで燃費を計測すると、外乱で正確に測定 出来ないんで、実験室のデータを積み上げて、燃費を計算してる。

国が定めた方式よりも、合理的に思えるんだけど、お上の言う事は絶対。修ちゃんは 辞任。なんかちょっと可哀想。どうせ、みんな公表される燃費なんて誰も信じては いませんから。30k/lが、30.1k/lになって、喜んでいるのは、車屋だけであります。 数値信仰の極みをよく突いてますなあ。日本人は、数値が一人歩きするの大好きですから。

ああ、思わず愚痴めいた。早速、壊れた石を調達しよう。トランジスタ界のアイドル、 2SC1815あたりを陵辱してけばいいんだな。

dead tr

.include standard.bjt

.subckt good c b e
q1 c b e 2sc1815
.model 2SC1815 NPN
.ends

.subckt ceo c b e
q1 co b e 2sc1815
r1 c co   100meg
.model 2SC1815 NPN
.ends

.subckt ces c b e
q1 c b e 2sc1815
r1 c e   2
.model 2SC1815 NPN
.ends

.subckt lowhfe c b e
q1 c b e 2sc1815
.model 2SC1815 NPN(Bf=3)
.ends

IB 0 B 200n
VC C 0 2.0
X1 C B 0 lowhfe

.control
dc vc 0.0 5.0 0.05 ib 10u 100u 10u
run
plot abs(i(vc))
.endc
.end

subcktに正常品と、色々な悪性トランジスタを定義してみた。ceoは、コレクタがオープンに なっちゃった場合を想定。チップとリード線を接続するボンディングワイヤーが断線 したとか、接合不良ですかね。実際は、100Mという高抵抗で、一応回路的には 接続してます。

次のcesは、いわゆるショート状態。適当に2オームをC-E間に入れてみた。 こういう破損なら、テスターで導通試験すれば 簡単に判定出来ます。

それに対し、ceoの不良は、テスターでは(通常)良否の判定は 困難です。(B-C間のダイオード特性から、推定は出来るか。)

次は、lowhfe。電流増幅度が規格では400となってるけど、極端に低下した場合です。 トランジスタへのストレスで発症します。これもテスターでは判定不可。ちゃんとした 設備のある所で、診てもらいましょう。 なお、この症状を発している時、カーブトレーサーの波形をぼーと眺めているだけでは、 症状を見抜けません。グラフの形は、正常なものと一緒だからです。ちゃんと、グラフの 目盛りの単位を診てあげるのがこつです。

とまあ、代表的な症状を、実験室内で作り出したわけですが、実生活ではどうでしょう。 それをやるなら、代表的な増幅回路の現場にでも、この孫ボードトランジスタを投入して、 どういう総合的な症状になるか、観察する事から始めます。

旨く、症状を掴み、そこから一発で、トランジスタの抱える病魔を推定する。こういう 名医は、昔は街の電気屋さんが担っていたんですが、最近のヤマダ君の所なぞは、 早くそんなおいぼれはうっちゃって、新しいのにしましょうやとしか言いませんね。

これも時代の趨勢なんですかね? オイラーの所のTVも、女房が酷使してるんで、 それそろ電解コンデンサあたりがへたり初めているかも知れないな。 生命保険ならぬ、買い替えのための倹約をしなければ。

えっ、今晩から晩酌抜きだって?!